今回は、vol.013でお約束した通り、観光と交通の関係について、一言。
観光は、観光客が観光地や観光施設を訪問する行動であり、観光客の居住地(普段住んでいる場所)と訪れる観光地を結ぶ交通や観光に関する情報によって、観光の行動は助長され、促進され、時には、交通が観光行動を阻害することもあります。専門的にいうと、観光客を『観光主体』と言い、観光客を受けいれる地域や施設を『観光客体』と言い、交通や観光情報を『観光媒体』と言います。つまり、交通はあくまでも、観光主体と客体を結ぶ媒体なのです。
ただ、実際には、観光地は観光客の移動に沿って演出されることも事実です。例えば、海岸線や山岳・高原の道路や鉄道の車窓のように、美しい景観を見せる場を提供するという役割を持っています。普段見る自家用車からの風景とバスに乗って高い目線から見る景色や、ゆったりと自転車に乗ってみる風景とでは、全く異なる印象を提供し、観光風景の多様性を醸し出す手段となります。
また、交通が観光媒体だとしても、時として観光客体になることもあります。例えば、SLに乗るために大井川鉄道沿線の温泉に行く場合、SLは交通(移動)手段というよりは、むしろSLそのものが観光目的となるかもしれません。
しかし、多くの場合、交通は観光媒体(移動手段・輸送手段)としての要素が強いことは否定できません。そこで、観光地では、交通整備こそが観光振興の手段であると考えているケースが多いのです。このように考えている地域に水を差すようですが、実は交通は必ずしも観光振興に寄与するとは限りません。
具体的には、交通網が地域に与えるマイナスの影響には、次のことが考えられる。まずは、利便性が高まり、容易に観光地に行けるようになると、有り難みが減ります。観光は、非(異)日常性を楽しむためであるため、いつでも行けるとなると、「またいつか行けばいいや」ということになり、他の目的地を選択してしまう可能性が高くなります。静岡県内の人が富士山に登ったことが少ないことを考えれば、想像がつくのではないでしょうか。人間とはなんと勝手な生き物なのでしょう・・・。
また、交通網の整備によって、周辺の地域を含め、観光構造が変化します。アクセス性が高まるため、宿泊しなくても楽しめるため、宿泊者が減り、日帰り客が増えます。立ち寄り時間が短くなり、素通りされる地域が出ます。そのため、観光客がその地域で使うお金が減り、かえって地域経済が悪化してしまいます。
そこで、考えなければいけないことは、交通網を整備することで地域経済を良くするためにはどうすれば良いかです。それは、地域の魅力を高める努力を怠らないことです。交通網が整備されればすべて丸く収まり、観光客が増えて、地域経済に好影響を及ぼすという考えは捨てなければいけません。第一に、地域の魅力を高めることが優先されるべきであって、あくまでも観光媒体である交通網の整備は、魅力ある観光地あってのことであるという認識を強く持つことが大切です。どんなに不便なところでも、本当に行きたければ、頑張って行きますが、たいして行きたいと思わなければ、どんなに交通が便利でも行かないのが常です。今や全国各地の交通網はほぼ整備が終わったと考えても良いでしょう。以前のように交通網が発達していることが観光振興の強みになることはありません。競合観光地がひしめき合うなかで、最も考えなければいけないことは、他の地域と比べて魅力的な町を作る、魅力的なサービスを提供することです。
交通は決して観光振興の万能薬ではありません。交通網の整備が観光振興に寄与するというのは、単なる“神話”に過ぎないと思うくらいでちょうど良いのです。
2005年02月22日
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