「『雇用保険法』は参院において、本日可決、成立した」という文書を厚生労働委員会の委員に配布してしまったのだ。完全なフライングというよりも、国会を軽視したとして野党のみならず与党の議員も激怒した。
何が問題かというと、厚生労働省は行政機関である。立法機関、つまり、法律を制定するのは、行政ではなく、国会議員から構成される国会である。行政機関が、まだ国会で成立していない法律をすでに成立したと発表したことは、“官僚が国会議員を馬鹿にしている”のと同じ意味である。
これを許すということは、官僚主権を認めることになる。国民の代表は国民による選挙で選ばれた国会議員であって官僚ではない。これまでの間、官僚主権で政治が動いてきたことを裏付ける事象である。
問題はそれだけで終わらなかった。某S参議院議員(女性)は、4月10日の厚生労働委員会で次のような発言をした。「雇用保険法の成立が遅れたのは、厚生労働省の不手際であることは問題だが、国会そのものの責任でもある」と発言した。これには野党のみならず、与党も憤慨し、厚生労働委員会が止まってしまった。要するに、S議員は、法案が成立しないのは、国会に責任があり、そのために現場が混乱しているというのだ。
一読すると、なにが間違っているかわからないかもしれない。しかし、小学校で習ったように、国会こそが唯一の立法機関である。S議員に国会議員としての自覚さえあれば、厚生労働省が国会を軽く見ていることを怒らなければおかしい。S議員は官僚の目線で発言しており、国会議員の意識に欠けていることは明らかである。S議員は、官僚(省庁)が法律を作っているという強い意識があるのだろう。官僚主導の国会に疑問を持っていない。本人は、自分が間違ったことを言ってしまったという意識すらないと聞く。困ったものだ。
S議員は、厚生労働省の局長を辞めて参議院議員になった官僚出身者である。こんな議員は、ずっと官僚をやっているべきであり、国会議員としての資格はないと言う批判の声が議員の間から上がっている。長い間、官僚機構にどっぷり浸かっていると、このような意識と体質になってしまうのだろうか。参院の厚生労働委員会は、S議員が委員会で謝罪するまで開催しない可能性が高いようだ。この混乱を招いたS議員の責任はとても重い。
(2007年4月12日)


